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9人きょうだい 九州文化学園・柏木主将 チームと家族の夢に挑戦

 「この家族じゃないと今の自分はない。みんなを甲子園に連れて行く」

 九州文化学園高野球部の柏木寿志(かずゆき)主将(17)は9人きょうだいの五男。兄4人と姉2人も野球やソフトボールの経験者で、二つ下の弟も今春、九文に入った。「甲子園の土を踏む」というチームの悲願は、柏木一家にとっての夢でもある。第3シードとして臨む高校最後の夏、夢は実現可能な目標に変わった。

 兄や姉の影響で相浦小3年からソフトボールを始めた。家族11人が一つ屋根の下。けんかや遊びで「暇はしなかった」。中学時代は硬式チームでプレー。父の浩一さん(53)は振り返る。「男にせよ女にせよ、共通していたのはボール。誰かが試合の時はみんなで応援に行き、家に帰った後は批評をし合った」

 一度、挫折しそうになったことがある。中学3年の春、右肘を手術することになり「怖くて野球をやめようとも思った」。だが、きょうだいたちが頑張る姿、励ましてくれる優しさが、踏みとどまらせてくれた。「家族のためにも」。実家から通える今年で創部11年目の九文に進んだ。

 元プロ選手の古賀豪紀監督(52)の下、練習は打撃や紅白戦がほとんどで、あとは自由。「自分で考えて高める」やり方は性に合っていた。実戦中心だからこそ身につく「一歩目の反応の速さ」(古賀監督)などを武器に、攻守両面で要となる遊撃手に成長した。

 小、中学時代に続いて主将に立候補して、学校でも生徒会副会長として人前に立つ。「駄目なことは駄目だと言わないと気が済まない性格」で、仲間たちに厳しい言葉を掛けることもある。でも、その分、自らもきつく戒めてきた。口だけではなく、行動で示してきた。

 その中で大きかったのは、やはり家族の支え。「家で自分は全然しゃべらないし、小さいころから野球で褒められることはなく、駄目出しばかり。でも、大事なときは必ず助けになってくれる」。九文OBで2014年夏に初の県大会4強に貢献した兄の貴幸さん(22)からは「最後は気持ち。それを全員に共有させるのがおまえの役目だ」と背中を押してもらった。

 いよいよ集大成の夏が幕を開ける。九文は今季、4月の九州地区県大会で初めて決勝に進み、6月のNHK杯県大会も4強入りした。十分に初優勝を狙える力をつけてきた。「恩返しの場所は甲子園」。チームのために、そして家族のために、必ず、かなえてみせる。